「……いつから盗み聞きなんて趣味を持ったの」

 女子には気付かれなかったけど、近江にはバレた。

「飲み物を買いに来ただけで、別に盗み聞きしたかったわけじゃ……」

 出てきたのは言い訳じみた言葉。
 我ながら情けない。

 近江はそんな俺に呆れたのか、ため息をついた。

「そういうことにしておくよ。じゃあね」
「あ、ちょっと……」

 俺は咄嗟に近江を引き止めた。
 振り向いた近江が、どこか不機嫌そうに見えてしまう。

「ジュース奢るからさ……ちょっと付き合ってくんね?」
「……すぐ終わらせてよ?」

 俺は近江と自分のジュースを買い、自販機のそばにある階段の、近江より低い位置に座った。

 どう切り出せばいいのかわからなくて、無言になってしまう。

「それで? どうかしたの?」

 しびれを切らした近江が聞いてくれた。

「いや……なんて言うか、そういえば近江って人気だったな、と」

 けれど、俺はまったく無関係のことを言ってしまった。
 若干、自己嫌悪に陥る。

「最近は減ってきてるけどね。みんな飽きてきちゃってるんじゃないかな」

 それでも告白されるのだから、やっぱり人気なんだと思う。

 少しずつペットボトルの中身を減らし、本題に入る。

「……好きな人、いたんだな」
「ああ、それ? ひなたちゃんだよ」