そのことに安心する自分がいた。

「聖? 悪いんだけど、学校まで持ってきてくれない?」

 夏希にスマホを返したらしく、そう言われた。

「ふざけんな。俺が遅刻する」
「じゃあ沙奈の家まで来て。住所は今から送るから。じゃ」

 夏希は俺の返事を聞くより先に、一方的に電話を切った。
 それからすぐ、メッセージが届いた。
 それが有川の家の住所らしい。

 地図アプリにその住所を入力し、急いで持っていく。

「あ、矢野!」

 半分歩いたか歩かないかくらいで、名前を呼ばれた。
 向こうから三人の人影が近付いてくる。

「……向かってきてたのか」
「あんた待ってたら、私が遅刻するからね」

 夏希はそう言いながら、自分の弁当箱を取った。

 自分で持ってこいと言っておきならがら、それはないだろと文句を言おうとしたが、夏希はひなたたちのほうを振り向いた。

「じゃ、二人とも。またお泊まり会しようね」

 夏希は颯爽と自分の学校に向かった。

「それじゃ、私たちも急ぎめで行きますか」

 ゆっくりひなたと登校、なんて幸せ展開にはならなかった。
 有川が急げと言うことは、遅刻ギリギリなんだと思う。

 俺たちは早足で学校に到着した。