「そんなに仲がいいのに、二人は付き合ってないの?」

 思わず出た言葉だと思うけど、近江君の不思議そうな表情が面白くて、私は笑ってしまいそうになった。

「聖とは腐れ縁みたいなものだよ。小学校からずっと一緒なの」

 家は近所ではないから、生まれたときからずっと、みたいな漫画みたいな関係ではない。
 ずっと同じ学校で、仲がいいだけ。
 それ以上でも以下でもない。

 なんて言ったら、少し寂しいような気もするけど、ふさわしい言い方が思いつかない。

「だから下の名前で呼んでるんだ?」

 なんだか質問が多いような気がするけど、初めて会った人からすると、当然な疑問だと思う。

「私、聖の妹とも仲がいいからね。矢野って呼ぶと変な感じがするから」
「それって、矢野に猫耳覚えこませた例の?」
「そう、その子」

 その覚え方は、と思ったけど、沙奈ちゃんが知っている妹情報はそれしかないから、無理ないか。

「会ってみたい」
「今から会える」

 聖はそれだけ言うと、歩き始めた。
 ずっと止まっていた足が、ようやく進む。

「今から会えるって、どういうこと?」
「その子、今から行くアイス屋でバイトしてるの。今日シフトみたいだね」
「え? 矢野の妹って、中学生だよね?」