「……わかった」

 聖は納得していないような、どこか戸惑いを残しながら返事した。

 放課後になって、私たち三人は昇降口で近江君を待っていた。

「なんで私があいつを待たなきゃいけないの」

 沙奈ちゃんは独り言のように近江君への文句を並べる。
 私は苦笑しながら聞き、隣で棒立ちしている聖に視線を移した。

「聖、今日ずっと元気ないみたいだけど、なにかあった?」
「ん? 大丈夫。まだ体育祭の疲れが取れてないだけだから」

 聖が笑顔を取り繕ったから、余計に心配になってしまう。

「お待たせ」

 改めて聞こうとしたら、近江君が来てしまった。
 沙奈ちゃんは遅れてきた近江君を睨む。

「謝罪くらい」
「有川、いいだろ。近江だって用事くらいあるんだから」

 沙奈ちゃんが近江君に文句を言おうとすると、聖が間に入った。
 沙奈ちゃんは不服そうにし、私の横に来た。

 そんな沙奈ちゃんを見て、聖はため息をついた。

「ごめんな、近江」
「いや、こっちこそ遅れてごめん」

 遊びに行く前だというのに恐ろしく気まずい空気が流れ始めた。

「じゃ、じゃあ、帰ろう?」

 その空気を何とかしたいと切り出すけど、誰一人笑わなかった。