「え、私?」

 仲間外れにされたようで、混ざりたいなと思っているときに唐突に言われたから、必要以上に驚いてしまった。

 ていうか、私じゃなくて聖が自分でやったらいいのでは……

「ひなたちゃん、矢野にやってもらったでしょ? お返しに」
「……そういうことなら」

 私は聖と向き合うと、聖は戸惑いながらもはちまきを外してくれた。
 それを受け取り、はちまきでネクタイ結びをする。

 制服でネクタイを結んでいるから、簡単にできると思ってたけど、やっぱり人にやるとなると、少し難しくて手間取ってしまった。

「よし、できた」

 なんとかうまくできて、私は聖から離れる。
 聖は顔を背けていた。

「聖?」
「矢野は距離の近さに照れたんだよ」

 こっそり耳打ちをしてくれた沙奈ちゃん、どこか楽しそう。
 だけどそれは聖にも聞こえたらしく、聖は沙奈ちゃんを睨んだ。

「ほらほら矢野、言うことがあるんじゃない?」

 沙奈ちゃんは聖に耳を向けた。
 聖は悔しそうな表情をする。

「ありがとな、ひなた」

 聖はそれだけを言うと、どこかに行ってしまった。

「逃げちゃった。沙奈様、ありがとうございましたって言わせたかったのに」

 内容も内容だけど、そんな言い方、聖は絶対にしないと思うよ……