言葉に詰まった。
 この状況で固まってしまうのは、最悪だ。

「どうぞ?」

 わざと空気を読まないのか、篠田さんにマイクを渡された。

「お姉さん?」

 私が答えないから、司会者も盛り上げ方に困っている。

「その子もアキラに告白するんだよ」

 小声だったから、客には聞こえていない。
 だけど、司会者には聞こえている。

 それを聞いた瞬間、司会者はマイクを持ち直した。

「お姉さんも天形狙いらしい! 彼女がいる前で告白なんて、お姉さんは意外と勇者だ!」

 客が求める、面白い展開にでもなったのだろう。
 信じられないくらい、歓声が大きくなる。
 今叫んでも、私の大声はかき消されてしまうだろう。

 でも。私は、逃げないって決めたんだ。

 私は緊張しながら息を吸う。

 そしてそのまま気持ちを吐き出そうとした瞬間。

「なに、してんの」

 いつの間にかステージに上がっていた天形が、後ろから私の持つマイクを押さえた。
 汗だくで、少し息が切れている。

「あ、まがたこそ……なに、してんの……」

 まさか天形が出てくるなんて思ってなかったから、動揺が隠せない。

「そうだぞ、天形。場がしらけるようなこと、すんなよ」

 司会者がマイクを通して言ってしまったから、天形へのブーイングが止まらない。