中庭に出て、焼きそばを売っているテント前に出来ている列に並ぶ。

 少しずつ近付いて、そこが天形のクラスがやっている出し物だと気付いた。
 天形は焼きそばを作っていて、私には気付いていない。

 逃げるとしたら今がチャンスだけど、あと三人分待てば……というところまで並んで、抜けるのはなんだか出来なかった。

「いらっしゃい! いくつにしますか?」

 ジェスチャーで一つ、と頼む。
 お金を払い、一パック受け取ると、列から外れる。

 少しすると振り返り、天形の姿を盗み見る。
 ここからは背中しか見えなかったけど、一生懸命働いているのがわかる。

 やっぱり、かっこいい。

 天形への想いを再確認し、私は座れる場所を探す。
 その途中で、夏希から電話がかかってきた。

「天形に告白勝負するって、何」

 電話に出た瞬間、怒りの籠った言葉が聞こえてきた。
 噂でも聞いたのだろう。
 あれだけ堂々とバトルしていたら、噂にならないわけない。

 私のことを知っている人はいないから、知られることはないと思ったけど、事情を知る夏希だからすぐにわかったのだろう。

「話の成り行きで……」

 ただ単に流されただけだから、これ以外言いようがなかった。

「あの泉って子と勝負するんでしょ? 大丈夫?」