「いえ、大丈夫……」

 そう言いながら顔を上げたら、篠田さんと目が合ってしまった。
 篠田さんは目を見開くと、そのまま私を睨んできた。

 真っ直ぐ私のところに来ると、勢いよくテーブルに手をついた。

「バカにしに来たの!?」

 篠田さんの大きな声で、教室内が静まり返る。
 しかし、すぐに他の客に謝る店員の声が聞こえ、賑やかさを取り戻す。

「篠田、何してんの」

 海賊のような格好をした人が、慌てて篠田さんのところに来る。
 腕を引っ張ろうとするけど、篠田さんはそれから逃げた。

「ズルい手を使わなきゃアキラに見て貰えない私のこと、バカにしてるんでしょ? アキラが好きなのは自分だって、自慢しに来たっ……」

 またヒートアップしていく篠田さんの口を、海賊さんが塞ぐ。

「ごめんなさいね、この子ちょっとおかしくて。でもあなた……天形の知り合いなの?」
「中学の同級生、です……」

 自分で言って、悲しくなってしまう。

 私が勝手に諦められないだけで、天形が私を好きだなんてわからないし。

 だから、他の人から見て、私たちの関係はただの同級生だ。
 間違ってはいない。

 それなのに、篠田さんは納得してくれなかった。

「……この前、あなたの彼氏が来た。ひなたのことで話があるって、アキラに会いに」