そしてその日は夏希も予定がないということで、三人で行くことになった。



 土曜日、私たちは天形の学校の校門で待ち合わせをした。
 また一番に着いてしまった私は、その場から中の様子を伺う。

 中学のときとは違って、本当のお祭りみたいだ。

「おお! 文化祭だ!」

 気配を消して私の後ろにいた沙奈ちゃんが、子供のように騒いでいる。

「おはよう、沙奈ちゃん」
「ね、ひなた! まだ行けないの?」

 挨拶ではなくそんなことを返してきた沙奈ちゃんは、本当に楽しみなんだろう。
 そして、早く行きたいということしか頭にないのか、夏希の存在をすっかり忘れている。

「誘ってきた本人が忘れるってどういうこと」

 少し遅れてきた夏希が、沙奈ちゃんの頬をつねる。

「いたたた。つい楽しみで、夏希のこと忘れてた」
「まったく沙奈は……」

 二人のやり取りに思わず笑みがこぼれる。
 変な緊張も、若干和らいだ。

「あの!」

 すると、誰かに話しかけられた。
 声がしたほうを見ると、浴衣を着たあの子がいた。

「あっ……」

 沙奈ちゃんも気付いたみたいだけど、少し反応しただけで、見て見ぬふりをした。
 真っ直ぐ見つめられる。

「あなたがひなた?」
「そう、ですけど……」

 その子の勢いに負け、同い年のはずなのに敬語になってしまった。