冬花ちゃんの行動に、夏希は戸惑う。

「あれ? 私、怖がられてる? なんで?」
「夏希、小さい子にとって上から見られるのは怖いよ」
「……なるほど」

 夏希は私と同じようにしゃがんだ。

「名前、聞いてもいい?」

 すると、冬花ちゃんは私の背中から出てきた。

「おーみ、ふーか」
「……え?」

 なぜフルネームを聞かなかったんだろう、とすぐに思った。
 冬花ちゃんは、近江君の妹。

 ……かもしれない。

「なんでひなたが驚いてんの」
「だって、苗字知らなかったから……」

 でも、これで探しやすくなった。

「ひなたは嵐士君の連絡先、知ってるの?」

 たった一回しか会ってないのに名前を覚えているなんて、すごい記憶力だな。
 なんて感心してる場合ではない。

 私は近江君の連絡先を知らない。

「……知らないんだね」

 私の無言をそう受けとった夏希はスマホを取り出した。

「夏希、知ってるの?」
「まさか。沙奈に連絡するの。このままじゃ時間内に向こうに戻れないでしょ」

 夏希は話しながらメールを送ったのか、言い終えると同時にスマホをカバンに戻した。

「ふうかちゃんだっけ。お兄ちゃんとどこではぐれたかわかる?」

 冬花ちゃんは横に首を振る。