「別れたんだよ。今日」
「いや、なんで。昨日俺に喧嘩売って来たくせに」
「ねー」


天形の怒りを適当に流しながら、ひなたとやり取りを続ける。


「矢野。誤魔化さずにちゃんと説明しろよ」
「突っ走りすぎたなーと思っただけ。今の俺じゃ、天形が望むような未来にはできないんだよ」


俺の言う意味が伝わらなかったのか、天形は言い返してこなくなった。
それ以上会話が続かなくなり、お互いに黙ってしまった。


ちなみに、ひなたは天形に会いたくないとメールを送って来た。


俺は天形とは別の壁に体重を預けながら座る。


「バカが二人……」


そしてため息とともに吐き出した。


「なんか言ったか?」
「……別に」


一旦画面から目を離し、空を見上げる。


お互いに好きで、両想いなのに、どうしてここまでこじれているんだ、この二人。
こじらせたのは俺か?


「……めんどくさ」


考えるのも、二人の関係も。
もう、疲れた。


一度俺のせいで壊してしまったのなら、俺が取り持ってもいいんじゃないか。


そう思って、俺は立ち上がった。


「天形、また先生呼ばれないように隠れて待ってて。ひなた呼んでくる」
「え……」
「まだ帰らないってことは、ひなたにどうしても伝えたいんだろ?このままじゃ埒が明かない」


俺は戸惑う天形を置いて、校舎に戻った。