「みなさんこんばんは!寒い日が続きますが、風邪などひいていませんか?寒さに負けそうで、朝なかなかベッドから出られないDJユージです。それでは、ミッドナイトスターのお時間です」

 私が泣いていても、笑っていても、怒っていても。ユージさんはいつもと同じように声を聞かせてくれる。大好きな声、大好きなトーク、大好きな彼のセンス。それでも今は、その全てがただただ羨ましい。

「さ、今日もメッセージ読んでいきますね。ラジオネーム エタノールHOさん。
『ユージさんこんばんは。職場の後輩が落ち込んでいるのですが、うまい励まし方を教えてください』

 ありがとうございます。後輩想いなんですね。職場の後輩ということだから、仕事のことで悩んだりしてるのかな。話を聞いてあげるのも大切だけど、ほっと心がほぐれるような、その悩みとは離れたところにあるものをぽんと投げてあげるというのも大事だと僕は思う。だから、もし自分の後輩が悩んでいたら、僕は板チョコでもあげると思います。後輩さんは、エタノールHOさんのような先輩を持って、本当幸せですね。
 
 僕もね、この後輩さんのように仕事で落ち込んだことがあるんですよ。いや、みなさんありますよね。生きていれば色々なことがあるから、挫折したり、もうだめだと思ったり、そういうのあると思うんですけど。

 これは、僕がパーソナリティを始めたばかりの頃の話です。ある番組にアシスタントパーソナリティとしてヘルプで入らせてもらったことがあったんです。そのときに、まあ張り切って、空回りしてたんでしょうね。ベラベラとしゃべっちゃったんですよね。多分初めてスタジオに入れたこととか、アシスタントとして頑張らないと!とか、そういう思いが強くて。メインパーソナリティの方が途中で笑うんですよ。それを見て、うわー嬉しいなって思いました。自分の話を聞いて笑ってくれてるんだとか、こんな大御所の方と掛け合いが出来てるんだとか。ずっと話すのが苦手だと思っていたけど、自分って意外と話せる人間だったんだ!と嬉しくなったり。

 生放送だったんですけど、その時のプロデューサーがその日の放送を録音したCDを最後にくださったんですね。僕自身すごく楽しかったので、あーこれは継続でアシスタントやらせてもらえるかも!なんて期待してたんですけど、そのプロデューサーに『しっかり聞け』とだけ言われてね。鼻高々になっていた僕は、その音源を聞かずに放置していたんですよ。そんなの聞かなくたって、自分が話してることは自分が一番分かっているんだから、なんて高をくくってね。いや本当、恥ずかしいです。
 
 だけどいつまで待っても、次のオファーが来ない。どれだけ問い合わせても、繋いでももらえないんです。そこで初めて、その音源を自分で聞いてみたんです。本当に、愕然としました。僕ばかりしゃべっているんです。メインパーソナリティは、そんな僕の話に相槌をうつばかり。しゃべりすぎて脱線する僕の話を、その方がうまく軌道修正してくれていたんです。それに気付いた時、もう本当に顔から火が出るというのはこのことかというほど、恥ずかしかった。
 パーソナリティって、話す仕事だと思っていたんです。自分が話して、自分の言葉をつかって、自分のタイミングで番組をまわして。だけどそうじゃない。一番大事なことは“聞く”ということなんだと、その時に初めて気が付きました。今こうやって番組を持たせてもらって一番大事にしていることは、リスナーのみなさんから届くメッセージを、きちんと“聞く”ということです。
 ラジオっていうのは、一方通行じゃだめなんです。みなさんからの声があって、初めて番組が成立する。僕たちとみなさんは、イコールで成り立っているんです。

 そしてこのことは、ラジオの仕事以外でも言えることだと思います。自分の気持ちや意見って、聞いてほしいって思うじゃないですか。人間ですから、それはすごく自然なこと。話したい、聞いてほしいっていう欲求は当然のものです。そこで改めて“聞く”ということも意識してみてください。新たな発見があったり、自分を見直す機会に出会ったり。そういうさまざまな角度から物事を見られるチャンスが詰まっているんですよ。なんて、熱く語ってしまいましたが、伝えたいことがあるときには、まず耳を傾けることからスタートしてみるといいと思います。ちょっとした僕の、恥ずかしい体験談でした」