あたしは、急に気が付いた。
「疲れた」
 当たり前やろ、と和弘は言った。ちょっと黙って、それから、全然違う話を切り出した。

「みんなやっぱ変わったなっち思ったよな。見た目の印象がいちばん変わったとは良ちゃんで、恋バナとか図太くなったとがねえちゃんで、目に見えん壁が厚くなったとが結羽ちゃんで、変わっちょらんつもりでも、おれも変わった」

 あたしはうなずいた。見た目の印象は、良一もだけど、和弘もずいぶん変わった。たぶん、この年齢だと、男子のほうが見た目の変化が大きいんじゃないかな。

「ある意味、明日実がいちばん変わってない気がする。彼氏がいるっていうの、別に普通のことじゃない? そういう意味で小学生のころから変化がないほうが、たぶん、おかしいんだよ」
「じゃあ、おれ、頭おかしかっちゃな。結羽ちゃんが引っ越した後も、ずっと忘れちょらんけん」

「何で?」
「何でって」
「意味がわからない。さっさと忘れればいいのに」
「おれにも、意味わからん。結羽ちゃんが小近島に帰ってくることはあり得んとにさ。忘れたかったよ。でも、最初はメッセージのやり取りばしよったし、その後は動画のせいで、結羽ちゃんがまだ近くにおる気がして、忘れられんやった」

 立ち泳ぎをしながらの会話に、あたしも和弘も、少し息が切れてくる。
 和弘は、あたしの手首を波の上に出してきつく握ったまま、あたしを引っ張って泳ぎ出した。といっても、ほんの数メートルの距離を移動しただけだ。ウキにつかまって、一息入れる。

 動画のせいで、か。あたしには、そんなつもり、まったくなかったのに。
 あたしは、リアルでの顔見知りには、誰にも自分の動画のことを話していない。両親にも口止めした。にもかかわらず、良一も明日実も和弘も、あたしの動画のことを知っていた。
 三人に動画のことを知られていると、割と早い時期から、あたしのほうでも気付いていた。

「よくコメントくれるアカウントのハンドルネームは覚えてるの。その中に、明日実がいるってわかった。いむさ、っていうハンドルネーム、明日実だよね? 和弘や良一にあたしの動画のことを教えたのも、明日実でしょ?」

「そうだよ。どうしてわかったと?」
「いむさって、アルファベットのASUMIを逆から読んだら、いむさになるから。あと、コメントの雰囲気が明日実と矛盾してないから」