ちょっとして、良一が落ち着いて、スイカの最後の一切れを誰が取るか、じゃんけんをした。あたしは特にほしいとも思っていなかったけれど、流れで、何となく加わった。結果は、和弘の勝ち。
明日実は自分のスマホを取り出して、和弘がスイカにかじり付く様子を撮った。和弘が文句を言うのにも耳を貸さず、その写真をメッセージ付きで誰かに送ったらしい。すぐに返信が来るのが、スマホのバイブレーションでわかる。
あっという間にスイカを平らげた和弘は、伸び上がって明日実のスマホをのぞいて、大きなため息をついた。
「ねえちゃん、才津先輩に写真送るなら、自分のやつば送れっち」
「よかやろ」
「全然よくなか。ねえちゃんが才津先輩に送りよる写真、別んとこに共有されよっとぞ」
「知っちょっよ。アキくんのいとこのサワちゃんが、和弘の写真、保存しちょっとでしょ」
「わかっちょっくせに、おれの写真送りよっと? やめろよ」
「何で? サワちゃん、いい子よ。まじめやし」
和弘はもう一度、盛大にため息をついた。
「余計なお節介すぎる」
明日実は和弘の抗議なんか耳に入っていない様子で、お気楽そうに肩をすくめて、あたしと良一に説明した。
「このスイカ、うちの彼氏がくれたと。アキくんっていって、家が農家でね、いろいろおすそ分けしてくれると。その代わり、うちは魚ば持っていったりしてね」
サラッとした口ぶりだった。でも、あたしは、何ともいえないショックを受けてしまって、リアクションできない。良一も、何か間抜けな声を漏らしたところを見ると、同じような印象をいだいたみたいだけど、あたしよりはまともに動けた。
「そっか。彼氏。付き合ってること、家族公認なんだ?」
「まあね。うちは同じ高校に和弘がおるし、アキくんもいとこたちがおるけん、隠しても、どこからかバレるもん。でね、アキくんのいとこで、和弘と同学年のサワちゃんが、和弘のこと好いちょっと」
「そっか」
「うちは普通の高校生やけん、付き合っちょっ人がおるかおらんか、それが生活とか人生とかの中でいちばん大きか問題さ。良ちゃんや結羽には、きっと想像できんよね。モデルとか唄とか、普通の高校生よりずっと刺激のあること、しよっちゃもん」
「そっか」
良一の口からは「そっか」ばっかりが出てくる。どう応えればいいか、良一もやっぱり戸惑っている。
明日実は自分のスマホを取り出して、和弘がスイカにかじり付く様子を撮った。和弘が文句を言うのにも耳を貸さず、その写真をメッセージ付きで誰かに送ったらしい。すぐに返信が来るのが、スマホのバイブレーションでわかる。
あっという間にスイカを平らげた和弘は、伸び上がって明日実のスマホをのぞいて、大きなため息をついた。
「ねえちゃん、才津先輩に写真送るなら、自分のやつば送れっち」
「よかやろ」
「全然よくなか。ねえちゃんが才津先輩に送りよる写真、別んとこに共有されよっとぞ」
「知っちょっよ。アキくんのいとこのサワちゃんが、和弘の写真、保存しちょっとでしょ」
「わかっちょっくせに、おれの写真送りよっと? やめろよ」
「何で? サワちゃん、いい子よ。まじめやし」
和弘はもう一度、盛大にため息をついた。
「余計なお節介すぎる」
明日実は和弘の抗議なんか耳に入っていない様子で、お気楽そうに肩をすくめて、あたしと良一に説明した。
「このスイカ、うちの彼氏がくれたと。アキくんっていって、家が農家でね、いろいろおすそ分けしてくれると。その代わり、うちは魚ば持っていったりしてね」
サラッとした口ぶりだった。でも、あたしは、何ともいえないショックを受けてしまって、リアクションできない。良一も、何か間抜けな声を漏らしたところを見ると、同じような印象をいだいたみたいだけど、あたしよりはまともに動けた。
「そっか。彼氏。付き合ってること、家族公認なんだ?」
「まあね。うちは同じ高校に和弘がおるし、アキくんもいとこたちがおるけん、隠しても、どこからかバレるもん。でね、アキくんのいとこで、和弘と同学年のサワちゃんが、和弘のこと好いちょっと」
「そっか」
「うちは普通の高校生やけん、付き合っちょっ人がおるかおらんか、それが生活とか人生とかの中でいちばん大きか問題さ。良ちゃんや結羽には、きっと想像できんよね。モデルとか唄とか、普通の高校生よりずっと刺激のあること、しよっちゃもん」
「そっか」
良一の口からは「そっか」ばっかりが出てくる。どう応えればいいか、良一もやっぱり戸惑っている。



