和弘が言葉を挟んだ。
「おれは、最後の学校探検、良ちゃんが記録に残してくれて、嬉しかったよ。全国、全世界に、真節小の姿ば見せてやってほしか。真節小が良ちゃんの母校やったおかげで、取り壊されても、ずっと映像が残ってくれるなら、おれは嬉しかよ」
良一が、まじめなトーンの声を少し震わせた。
「でも、和弘、おれはきれいごとを言ってみせてるけど、結局これは、おれの売名行為だよ。真節小っていう、大きなストーリーを持った存在を、おれのストーリーを語るために利用しようとしてる。本当にこれでいい?」
明日実が笑顔でサムズアップした。
「全然、大丈夫。良ちゃん、そげん言い方せんで、もっと胸ば張って! うちら、小近島のみんなは、良ちゃんのこと、応援しちょっとやもん。協力できることは何でもする。きっと真節小もね、卒業生の応援ができて、喜んじょっと思うよ」
見開かれた良一の目から、あっけなく、涙がこぼれた。良一は、つばが邪魔になるのかハットを外して、手の甲を目元に押し当てた。
「きれいごとばっかり言うみたいだけど、恩返しがしたいって思ってた。小近島にも、真節小にも。この大好きな場所のために何かしたいって思うんだよ。おれは、小近島で出会ったすべてのものに感謝してるから」
良一が静かな涙を流すのを、明日実と和弘が両側からトントン背中を叩いてやって、見守っている。
あたしは、いつの間にか良一の手から放り出されていたスマホを拾った。あたしのスマホと同じ機種だ。ロックを解除しなくても、カメラを起動させられる。あたしは黙って写真を撮った。シャッター音に気付いた良一が顔を上げた。
「結羽……」
「撮るんでしょ。全部。あんたが主人公のストーリーを物語るための、この島にある全部」
良一が、涙に濡れた頬で笑った。
「ありがとう」
あたしはまたシャッターを切った。良一の泣き顔は美しかった。
「おれは、最後の学校探検、良ちゃんが記録に残してくれて、嬉しかったよ。全国、全世界に、真節小の姿ば見せてやってほしか。真節小が良ちゃんの母校やったおかげで、取り壊されても、ずっと映像が残ってくれるなら、おれは嬉しかよ」
良一が、まじめなトーンの声を少し震わせた。
「でも、和弘、おれはきれいごとを言ってみせてるけど、結局これは、おれの売名行為だよ。真節小っていう、大きなストーリーを持った存在を、おれのストーリーを語るために利用しようとしてる。本当にこれでいい?」
明日実が笑顔でサムズアップした。
「全然、大丈夫。良ちゃん、そげん言い方せんで、もっと胸ば張って! うちら、小近島のみんなは、良ちゃんのこと、応援しちょっとやもん。協力できることは何でもする。きっと真節小もね、卒業生の応援ができて、喜んじょっと思うよ」
見開かれた良一の目から、あっけなく、涙がこぼれた。良一は、つばが邪魔になるのかハットを外して、手の甲を目元に押し当てた。
「きれいごとばっかり言うみたいだけど、恩返しがしたいって思ってた。小近島にも、真節小にも。この大好きな場所のために何かしたいって思うんだよ。おれは、小近島で出会ったすべてのものに感謝してるから」
良一が静かな涙を流すのを、明日実と和弘が両側からトントン背中を叩いてやって、見守っている。
あたしは、いつの間にか良一の手から放り出されていたスマホを拾った。あたしのスマホと同じ機種だ。ロックを解除しなくても、カメラを起動させられる。あたしは黙って写真を撮った。シャッター音に気付いた良一が顔を上げた。
「結羽……」
「撮るんでしょ。全部。あんたが主人公のストーリーを物語るための、この島にある全部」
良一が、涙に濡れた頬で笑った。
「ありがとう」
あたしはまたシャッターを切った。良一の泣き顔は美しかった。