良一は笑った。
「素直じゃないな。まあ、結羽は普通に絵になるから、自然体でもいいけどね」
あたしは横目で良一をにらんだ。
「からかわないで。あんたは仕事柄、カメラがそばにあっても気にならないんだろうけど、あたしは違うんだから。校舎の探検のときだって」
ふと、良一は表情を引き締めた。声のトーンもまじめそうに低く落ち着く。
「勝手に撮影を押し通したのは、確かに、よくなかった。でも、結羽だって記録は残すつもりだっただろ。動画、おれたちだけの保存用とおれのチャンネルで配信するバージョンと、二つ用意するから、勝手にカメラを回し続けたこと、許してくれないか?」
「許すとか、別に」
「ずっと怒ってるっていうか、機嫌悪いよな、結羽。おれが何か気に障ることしてる?」
自分の中に台風を飼っているような気分だ。良一に近付くと、台風がぐるぐる、激しく暴れ出すのを感じる。
「あたしがイライラするときは、人の行動の理由や意味がわからないとき。真節小の取り壊しのことを動画で流して、何になるの? あんたが主人公のストーリーに欠かせない絵だから撮ったの?」
良一は即答しなかった。逆に、あたしに訊いた。
「結羽だって、自分が主人公のストーリーを生きてるだろ? 自分にしか表現できないものを探して、表現するための手段や場所を勝ち取ろうとして、生きてる。自分の世界を、自分が中心に立って回してるんじゃなきゃ、こういう生き方はできないだろ?」
「そうかもしれない」
「真節小のことを、結羽はきっと唄にする。それは、おれがあの校舎の中で動画や写真を撮ることと、そんなに違いがあることかな?」
表現する方法が違うだけで、表現したいものはあたしと良一で同じだと、良一は言いたいんだろうか。
「素直じゃないな。まあ、結羽は普通に絵になるから、自然体でもいいけどね」
あたしは横目で良一をにらんだ。
「からかわないで。あんたは仕事柄、カメラがそばにあっても気にならないんだろうけど、あたしは違うんだから。校舎の探検のときだって」
ふと、良一は表情を引き締めた。声のトーンもまじめそうに低く落ち着く。
「勝手に撮影を押し通したのは、確かに、よくなかった。でも、結羽だって記録は残すつもりだっただろ。動画、おれたちだけの保存用とおれのチャンネルで配信するバージョンと、二つ用意するから、勝手にカメラを回し続けたこと、許してくれないか?」
「許すとか、別に」
「ずっと怒ってるっていうか、機嫌悪いよな、結羽。おれが何か気に障ることしてる?」
自分の中に台風を飼っているような気分だ。良一に近付くと、台風がぐるぐる、激しく暴れ出すのを感じる。
「あたしがイライラするときは、人の行動の理由や意味がわからないとき。真節小の取り壊しのことを動画で流して、何になるの? あんたが主人公のストーリーに欠かせない絵だから撮ったの?」
良一は即答しなかった。逆に、あたしに訊いた。
「結羽だって、自分が主人公のストーリーを生きてるだろ? 自分にしか表現できないものを探して、表現するための手段や場所を勝ち取ろうとして、生きてる。自分の世界を、自分が中心に立って回してるんじゃなきゃ、こういう生き方はできないだろ?」
「そうかもしれない」
「真節小のことを、結羽はきっと唄にする。それは、おれがあの校舎の中で動画や写真を撮ることと、そんなに違いがあることかな?」
表現する方法が違うだけで、表現したいものはあたしと良一で同じだと、良一は言いたいんだろうか。