会話はここまでだった。目的地に着いたんだ。海に突き出したカーブを曲がると、真節小が目の前にあった。
胸がギュッとする。
なつかしさと、悲しさと。何かとても大きな感情が、ぶわっと、体じゅうを包んで呑み込んだ。あたしは、ひりひりする透明な痛みの中に落ちていく。
ちんまりとした鉄筋コンクリートの三階建ての校舎は、赤みがかったベージュ色。校舎とL字を作るように建てられた体育館は、とぼけた赤色の屋根をかぶっている。
なつかしくて、だけど足りない。ものすごく足りない。ここにある景色は、記憶の中の真節小とは違う。
何もないんだ。
校庭脇に植えられていた木が、一本もない。鉄棒や登り棒、すべり台も、何もない。サッカーゴールも朝礼台もない。校旗や国旗の掲揚台すらない。
そして、誰もいない。何の気配もない。
明日実があたしと良一のほうを向いて、えくぼのある表情で言った。
「寂しかろ? 学校がちゃんと動きよったころ、この時間帯には、教頭先生が校門のところに立っちょって、おはようございますって言うてくれよったとに」
ポーカーフェイスな父は、あたしが相手でも平然として、朝の挨拶運動をやっていた。書道の授業もだ。父が書道の教科担当だったけど、まったくもって平然としていて、おかげであたしにもポーカーフェイスが身に付いた。
真節小は、海から道を一本隔てただけの場所に建っている。校舎のすぐ裏手は山。地形から推測するに、山を少し切り崩して、海を少し埋め立てて、真節小の敷地を確保したんだと思う。
胸がギュッとする。
なつかしさと、悲しさと。何かとても大きな感情が、ぶわっと、体じゅうを包んで呑み込んだ。あたしは、ひりひりする透明な痛みの中に落ちていく。
ちんまりとした鉄筋コンクリートの三階建ての校舎は、赤みがかったベージュ色。校舎とL字を作るように建てられた体育館は、とぼけた赤色の屋根をかぶっている。
なつかしくて、だけど足りない。ものすごく足りない。ここにある景色は、記憶の中の真節小とは違う。
何もないんだ。
校庭脇に植えられていた木が、一本もない。鉄棒や登り棒、すべり台も、何もない。サッカーゴールも朝礼台もない。校旗や国旗の掲揚台すらない。
そして、誰もいない。何の気配もない。
明日実があたしと良一のほうを向いて、えくぼのある表情で言った。
「寂しかろ? 学校がちゃんと動きよったころ、この時間帯には、教頭先生が校門のところに立っちょって、おはようございますって言うてくれよったとに」
ポーカーフェイスな父は、あたしが相手でも平然として、朝の挨拶運動をやっていた。書道の授業もだ。父が書道の教科担当だったけど、まったくもって平然としていて、おかげであたしにもポーカーフェイスが身に付いた。
真節小は、海から道を一本隔てただけの場所に建っている。校舎のすぐ裏手は山。地形から推測するに、山を少し切り崩して、海を少し埋め立てて、真節小の敷地を確保したんだと思う。