☆.。.:*・゜

 車は、窓から風を呑み込みながら走る。里穂さんは声を張り上げて、後部座席のあたしたちに言った。

「大近島にショッピングセンターができたって話、知っちょる? 三年前にオープンしたと」
 そのニュースは、明日実が知らせてくれた。だから、あたしも知ってはいるけれど、あまり想像ができない。

 里穂さんはこれから、そのショッピングセンターに向かうらしい。その前にガソリンスタンドに寄って、本土よりリッター当たり二十円高いガソリンを満タンに入れた。島には電車がなく、バスの本数も少ないから、自家用車は必需品だ。

 ショッピングセンターは、大近島の真ん中あたりにあった。山の一部を切り開いて平らにした土地に、スーパーと洋服屋と農協とホームセンターと電器屋とドラッグストアが造られていた。もちろん、広々とした駐車場もある。

 ショッピングセンターを中心に、大近島の各方面からの道が舗装されていた。真新しく黒々としたアスファルトは、古い道とは比べ物にならないくらいまっすぐに伸びている。

 里穂さんは、ドラッグストアで、お一人さま二個限りの特売品をあたしと良一にも二個ずつ持たせてレジに並んで、ほくほく顔だった。買い物を手伝ってほしいって、要するに、こういうことだ。
 ドラッグストアの戦利品を車に積んで、農協の野菜を買って車に積んで、スーパーに向かう。