あっ、と少年のことを思い出す。

「おかしいと思っていたんです。どうしても少年の母親とあの教団が結び付かなくて。だって、そこに連れて行かれるのは悪霊だけだと思っていたから……でも、今の話で分かりました」

ということは、やはり少年の母親は教団本部に囚われているということだろうか?
うーん、と唸っていると、「着いたぞ」と天地さんはエンジンを切った。

「言っておくが、俺から絶対に離れるな。分かったな!」

あまりの真剣さに、「了解です」と返事をしたが、この病院は私のホームグラウンド的な場所。そんなに構えなくても、と心の中で少しだけ反抗的になる。

それに気付いたのだろう、天地さんは私の頭頂部に拳固を落とすとそれでグリグリし出した。

「痛い! 何をするんですか? 止めて下さい」
「お前の爺さんと婆さんに頼まれた手前、俺はお前を危険にさらすことだけは絶対に阻止しなければならない。なのに、本人が非協力的みたいだからカツを入れている」
「入れなくていいです。分かりました。離れません! これでいいでしょう?」

フンと訝しげな視線を寄越しながら、天地さんは「降りるぞ」と素っ気なく言って車のドアを開けた。


 *


本当、乱暴なんだから。
頭頂部を撫でながら天地さんの後に続いて、時間外出入口である北館の救急出入り口から中に入る。