「どうぞ存分に使ってやって下さい。これも社会勉強。ミライのためです」

気を良くした祖父のその言葉で、たちまち私がムンクの叫び顔になったのは言うまでもない。


 *


翌日は土曜日。祖父の言葉どおり、私は朝から天地さんに呼び出され、こき使われていた。

「私まで一緒に病院へ行くんですか?」

後から祖母に聞いたのだが、二人が入院しているのはあの世継病院だった。

「もし、本当に何か憑いているとして、俺が手を出せば――」
「問答無用に祓っちゃう、でしたね」

はいはい分かりましたとばかりに軽く頷いた。

「しかし……世継病院か」
「世継病院がどうかしました?」

「いや、ちょっと」と天地さんが言葉を濁す。

「言いましたよね? 誤魔化さないって!」

キッと睨むと天地さんは、仕方がない、という顔をする。

「オフレコだからな」

念押しのように言われた〝オフレコ〟にワクワク感を覚える。

「機密事項か何かですか?」

そんな単語、普段滅多に使わないからだ。

「まぁ、ある意味そうだ」
「何ですか? 勿体ぶっていないで早く教えて下さい」

うーん、と天地さんは唸ると少し顔を歪めて言った。

「お前のその『ご主人様、早く散歩に連れてって』みたいなお強請(ねだ)りワンちゃんみたいな顔を見ると、どうも抵抗したくなる」

何そのお強請りワンちゃんって?

「冗談言っていないで早く教えて下さい!」

ブスッと頬を膨らませると、ようやく天地さんは教えてくれた。