八壱(やいち)さん――あっ、壱吾ちゃんの父親っていうのが、悪い人ではないんですが、合理主義で現実主義な人なんです。故に割り切れないことには耳も貸さないんですよ」

なるほど、だから彼は両親に内緒にしていたのか……と思いつつ、理由は違うが、私も祖父母に言えずにいる。

「分かりました。彼に会ってみましょう。早い方がいい」

そう言うと天地さんは胸元から手帳を取り出して、「明日の午後二時にしましょう」と早々に予定を立てた。

祖母は涙を浮かべて何度も「ありがとうございます」と礼を言った。そんな祖母の震える細い肩を抱き、祖父も頭を下げる。

「儂も元医者だ。だから、奇々怪々なものを信じているとは正直言いたくない。だが、儂は塔子ちゃんの言うことは全面的に信じてきた。それはこれからも変わらない――だから、天地先生、どうか壱吾のこと、よろしくお願いします」

「礼には及びません。その代わり」と言いながら天地さんが私を見た。途端に冷たい汗が背筋を伝う――と、天地さんはニヤリと口角を上げ言った。

「ミライさんに一生懸命働いてもらいますから」

「おお!」と祖父が相互を崩す。〝一生懸命〟これは〝祖父の好きな四文字熟語〟ベスト5に入る言葉だった。