「これこれ、塔子ちゃん……ご無理を言っては……」
祖父が諫めるように言うと、掌を前に突き出して天地さんは祖父の言葉を制止させた。
「それは、誰か祈祷を必要としていらっしゃるということでしょうか?」
「ええ、ええ、そうなんです。お話を聞いて頂けます?」
「喜んで」と天地さんが答えると、祖母は「感謝します」と両手を合わせ、早々に話し始めた。
「二日前、お友達のお孫さんがバイク事故を起こしたんです」
それは翠花さんの孫息子だった。
「でも、幸いなことに擦り傷程度の軽い怪我ですみました――なのに、目が覚めないんです。精密検査をしても異常は見つかりませんでした」
グッと涙を詰まらせる祖母に代わり祖父が話し始めた。
「壱吾は八百壱の跡取り息子なんだよ。翠花さんは彼を目に入れても痛くないほど可愛がっていましてね。バイクを買ってやったのも彼女なんですよ」
そのバイクが原因で、大切な孫が生死の境を彷徨うことになってしまった。それが耐え切れなかったのか、彼女まで倒れてしまい同じ病院に入院しているそうだ。
「免許を取ったばかりの頃は誰だって嬉しくて走り回るもんだ。儂にも覚えがある。翠花さんのせいじゃない」
そう言って祖父は祖母の肩をポンポンと叩いた。
「ええ。だから、目覚めないのは良からぬモノがあの子に憑いたからだと私は思うんです」
祖父が諫めるように言うと、掌を前に突き出して天地さんは祖父の言葉を制止させた。
「それは、誰か祈祷を必要としていらっしゃるということでしょうか?」
「ええ、ええ、そうなんです。お話を聞いて頂けます?」
「喜んで」と天地さんが答えると、祖母は「感謝します」と両手を合わせ、早々に話し始めた。
「二日前、お友達のお孫さんがバイク事故を起こしたんです」
それは翠花さんの孫息子だった。
「でも、幸いなことに擦り傷程度の軽い怪我ですみました――なのに、目が覚めないんです。精密検査をしても異常は見つかりませんでした」
グッと涙を詰まらせる祖母に代わり祖父が話し始めた。
「壱吾は八百壱の跡取り息子なんだよ。翠花さんは彼を目に入れても痛くないほど可愛がっていましてね。バイクを買ってやったのも彼女なんですよ」
そのバイクが原因で、大切な孫が生死の境を彷徨うことになってしまった。それが耐え切れなかったのか、彼女まで倒れてしまい同じ病院に入院しているそうだ。
「免許を取ったばかりの頃は誰だって嬉しくて走り回るもんだ。儂にも覚えがある。翠花さんのせいじゃない」
そう言って祖父は祖母の肩をポンポンと叩いた。
「ええ。だから、目覚めないのは良からぬモノがあの子に憑いたからだと私は思うんです」