「ええ、私が助教授をしている大学に入りたいそうです」
「それで、インターンシップもどきの押しかけ助手になったと……」
「そうです」

よくもまぁ、これだけでまかせが言えるものだと感心する。

「ところで、ミライとはどこで?」

祖父が疑問を持つのも当たり前だ。

「ああ、知り合った場所ですか? 駅のホームです。良くない輩に絡まれていたのを助けたのが最初の出会いです」

まぁ、と祖母の瞳がキラキラ煌めく。

「すると、貴方様はミライちゃんの恩人。それはそれは、失礼致しました」
「そうでしたか、ありがとうございました」

祖母と祖父は揃って深々と頭を下げた。

「儂は常々、受けた恩は三倍返しが普通だと申しております。先生のお役に立つのなら、精々こき使ってやって下さい」

祖父の言葉に天地さんの眼がキラリと光る。

「そう言って頂けて嬉しいです。助教授ごときが助手などと、ずっとおこがましくて持っていなかったのですが、最近とても多忙になってきまして、猫の手も借りたい状況だったんです」

「猫の手よりは少しはマシでしょう」と祖父が笑うと、天地さんも「そうですね」と明るく笑った。

何だろう……目を疑いたくなるようなこのほのぼのとした現状は? 唖然としながら眺めていると、唐突に祖母が「あのぉ」と天地さんに声を掛けた。

「僧侶の資格がお有りなら、ご祈祷とかも行われるのでしょうか?」
「祈祷? ええ、たまに頼まれることはありますが……」
「まぁ! 一石さん、ですって!」