「この間、偶然、八百壱(やおいち)翠花(すいか)ちゃんと見ちゃったの。男前な殿方とミライちゃんがいるところを」

うふふ、と笑って「翠花ちゃんと一緒に見たから見間違いじゃないでしょう?」と釘まで刺されてしまう。

「一石さんに言ったら、家に連れてきなさいって」

祖父まで知っているのか……ガクリと肩が落ちる。

「――怒ってない?」
「あら? (やま)しいことでもしているの?」

ブルンブルンと激しく頭を振る。

「全然! 全く! 分かりました。今度の日曜に来てもらいます」

こうなったら一蓮托生(いちれんたくしょう)だ。ぐだぐだと私が説明するより一緒に怒鳴られた方がせいせいする。

そう思って天地さんに連絡したのだが――彼も強者だった。〈了解。説明すればいいんだな〉とスマホの向こうで笑っていた。


 *


「まぁ! そうでしたの」

日曜日、約束どおりやって来た天地さんは山伏スタイルだった。そして、祖父たちにもコンビニの店員にしたのと同じ内容の自己紹介をした。

最初、彼の様相に戸惑いを見せていた祖父たちだったが、素性が分かると店員同様、手のひらを返したように愛想が良くなった。

「ということは、ミライは将来考古学者を目指しているということですかな?」

寝耳に水というような祖父の問いに天地さんは大きく頷いた。