「ああ、そうだ」と返事をしながら天地さんは車線を変更する。

「ということは、教団の人って霊能力者なんですか?」
「そういうことだ。だが、それはほんの一握り、または、偽装零だけかもしれない」
「じゃあ、金之井嬢が狙われているということですよね?」

毛利実利が取り憑いているということはそういうことだろう。

「それがな……」

浮かない顔で天地さんが言い(よど)む。

「どうしたんですか? 約束ですよね? 隠さずはっきりと言って下さい」

天地さんはフーッと大きく息を吐くと、「そうじゃないみたいなんだ」と言った。

「さっき、金之井のお(じょう)が学校に来ていないと言っただろう?」
「言いましたね。あっ、もしかしたら、もうさらわれたとか?」

だったら大変だ!

「話を良く聞け。そうじゃない。逆なんだ」

天地さん(いわ)く。金之井嬢は自ら教団に向かったらしい。

「あの娘は親にも内緒で教団に入会していたようだ。娘の姿が見えなくなり、両親はやっとそのことに気付いたらしい。それで表向きは略取(りゃくしゅ)・誘拐という形で担当部署が動き出した」

当然、公安と彼の従兄弟が在籍する謎の部署も陰で動いているらしい。知らないということは平和な事だ。そんな事件が身近で起こっていたとは……。

「逆とは、金之井嬢が毛利実利を教団に連れて行ったということですか?」

「そういうことだ」と天地さんは肯定するが、その直後「しかし――」と否定の言葉を続けた。