「隠し事ばかりですね! そんな人とバディなんて組めません」
「それについては大人の事情だ。許せ」

大人らしくない大人にそんなことを言われても、と唇を突き出しそうになるが、大人の事情と言われて怒るのも大人げないような気がして、「ここから先は隠し事無しでお願いします」と彼を許してしまっていた。シオ曰く。私は相当、人が良いらしい。

「――でも、公安が目を付けているということは、かなりヤバい教団ということでは? 私、ただの高校生ですが……」

祖父のお陰で腕に覚えはあるが、あくまでもそれは試合用だ。実践で使ったことなど無い。

「ああ、俺が守る。だから、側を離れるな」

くぅ、拳固で二発ほどぶん殴りたいほどイケメンな台詞だ。

「本当、人タラシですね」
「何だ?」

チラリとこちらに目を走らせ、首を傾げる天地さんを無視して、「もしかしたら向かっている先って」とフト浮かんだ思いを口にする。

「本当に勘が良くなったなぁ。そうだ、その虚偽の静寂教団の本部と言われているところだ」

道路上の案内標識を見ると、富士の樹海と云われる青木ヶ原方面に向かっているようだ。

「話を元に戻しますが、浅井青年を殺害した毛利実利は悪霊となり金之井嬢に取り憑いている。その毛利実利を虚偽の静寂という教団が狙っている、ということですよね?」