「なら、教えてやる。だが、知ったからには今後はこの案件にも協力しろ」

天地さんの顔が映画に出てくるマフィアのドンのように見えるのは、目の錯覚ではないと思う。

「えっと、やっぱり今の無しで」
「今更遅い!」

そう言うと天地さんは車をスタートさせた。どうやら私を逃さないためらしい。

「何処に行くんですか?」
「ちょっと流すだけだ」
「流すだけねぇ」

メチャクチャ顔がワルになっているんですけど……とは今は怖くて言えない。

「俺がどうして毛利実利(もうりみのり)を泳がせていると思う?」

毛利実利? 誰それ? ウーンと考え、ハタと思い出す。

「浅井青年を殺害した犯人ですね?」
「ああ、そうだ。今は金之井のお嬢に取り憑いている奴だ」
「そう言えばどうしたんだろう? 彼女、最近学校に来ていないようだけど……」

別のことで私も忙しかったので気にも止めていなかったが――。

「天地さん、何かしたんですか?」
「だから、どうして俺が何かしたになるんだ! どいつもこいつも」

鼻息荒くチッと舌打ちをすると、天地さんはハンドルを思いきり右に切った。うわっ、と彼の方に身体が倒れるが、シートベルトが寸前でそれを食い止める。

「何て乱暴な運転をするんですか! 事故に遭うのは天地さん一人のときにお願いします」