「お前たちが思っているとおり、母親ももうこの世にいないだろう」
「やっぱり……」
「犬っころは知っていたようだな」
「何がです?」
「霊の行方不明事件が多発していることをだ」

「はぁぁぁ?」と思わず叫んでしまった。
私の声に驚いたのか少年の姿がフッと消える。

〈大丈夫だよ。ボクが見とくから〉

シオの声が聞こえホッと安堵の息を吐き、訊ねる。

「成仏したんじゃなくて……霊が行方不明になるんですか?」
「ああ。霊たちの間で犯人は俺だと思われている」

「違うんですか?」と訝しげに天地さんを見ると、間髪入れず「アホか」と怒鳴られた。

「お前も知っているだろう。俺は無駄な労力を使わない主義だ。第一、祓って恨まれたら割りが合わない。お前のようなアホーじゃあるまいし、そんな馬鹿げたことは絶対にしない」

一部疑問視したい言葉はあったが、彼の性格を考えると説得力のある言い分だった。

「だったら何処に行っちゃったんですか?」
「おおよその見当は付いている。だが……」

天地さんの勿体(もったい)ぶった言い方にイラッとする。

「情報料を取るんですか? だったら払います。ちゃんと聞かせて下さい」

借金が少々増えたところで、今更仕事内容が変わることもないだろうと高をくくっていたのだが――甘かった。