「千葉県茂原市(もばらし)の〝茂原七夕まつり〟だ。そこには来週末行く予定だ」

嬉々としている天地さんにうんざりする。

「しかし、これほど思い通りに事が運ぶとは……先賢(せんけん)(めい)がある俺って神か?」

前回行った〝入間川七夕まつり〟の地で、思惑どおり七夕に関する情報が面白いほど収集できたのだ。

自画自賛の彼だが、全ては私のお陰だろう、と思っていても口には出さない。それが大人だからだ。

「ところで、浅井青年の件、どうしてあんなに詳しく知っていたんですか?」

その代わりに、この間からずっと抱いていた疑問を口に出す。
よくよく考えたら、問答無用で霊を祓う天地さんが霊から詳細を聞き出せるとは考え難い。なら、誰から、と疑問が湧いたのだ。

「教えて欲しいか?」

運転席からニヤリと笑う守銭奴。

「いいえ、やはり結構です」

危ない危ない、もう少しで借金が増額されるところだった。

「なーんだ、タダで教えてやろうと思ったのに」

その嫌味っぽい言い方に、こんにゃろー、と心の中で拳固(げんこ)を振り上げたのが功を奏したのか、案外あっさり教えてくれた。

「従兄弟に警察関係者がいてな、そいつからの情報だ」
「それって情報漏洩(ろうえい)じゃないですか」

従兄弟も天地さんと同じ穴のムジナということだろうか?

「世間話だ」

だが、天地さんは何でもないことのように言い放つ。太々しいとはこのことだ。

「そんなことペラペラ私に話してもいいんですか? チクリますよ。従兄弟さん共々逮捕されますよ」