「寺や神社には残留思念が多いですものね」
「ああ、歴史が長い分、思念も多く遺されている。そこからヒントを得ようとするが……」
「祓っちゃうんですね?」
「そういうことだ」
「そこで私を見つけた。で、手伝えと」
「そんなところだ。これもご縁、運命だと思って諦めろ」

「それに」と天地さんがニヤリと笑う。

「俺が側にいる限り、お前は悪霊の餌食にならずに済む。幸いじゃないか」

それがあるからOKしたのだ。

「でも――金之井嬢たちに恨まれるような悪いことをした覚えがないんですが」
「はぁ……? あっ、そうか、そうだったな。お前にはまだ悪霊が視えなかったな」

そう言って天地さんはこめかみをコツコツと人差し指で小突く。そして、「隣町で起こった殺人事件を知っているか?」と、訊いた。

浅井青年の事件だ。

「顔色が変わったな。あの金之井という娘は、直接ではないがそれに関与している」
「ちょっ、ちょっと待って下さい、どういう意味ですか?」

あまりに意外な言葉に頭の中が真っ白になる。

「犯人がストーカーしていたのは金之井という娘だ」
「浅井青年じゃなくて?」
「ああ。モデルのあの娘に心酔(しんすい)していたようだ」

天地さん曰く、犯人は精神病系の恋愛妄想型ストーカーだったそうだ。

「だから、SNSの呟きぐらいであんな(ひど)いことを……」
「被害者は男性でありながら相当な美人だったようだな?」
「写真でしか知りませんが、それはもう」