彼はそう言って胸を張る。その子ども染みた対抗心に、思わず『ガキ大将か!』とツッコミそうになるが、私は子供ではないのでグッと我慢する。

「俺は心霊考古学者として、七夕伝説の地を巡っている」

すると突然、脈絡も無しに話題が変わった。ついていけない私は「はい?」と()頓狂(とんきょう)な声を出してしまった。

先日初めて〝心霊考古学〟という学問を耳にして、それは何ぞや、そんなものが本当にあるのかと家に帰ると早々にネットで調べた。

そして、『考古学研究において、過去を知るために霊能者の透視能力などを手段とすること』と、冗談のような一文がマジで書かれた説明文を見つけた。

だから、彼が心霊考古学者ということは信じることにしたが……七夕伝説? また不可解な言葉が出てきた。

「ネットでマサチューセッツ工科大学? そこの人が『七十五年に亘って透視能力者と考古学者の関係は続いている』と述べた記事を見ましたが、そもそも考古学とは、実在する遺物や遺跡から、古代人の文化などを紐解く学問では? 七夕伝説の地を巡るって、それ、考古学と言えるんですか?」

どちらかと言えば人文学系の研究になるのでは、と思ったのだが、天地さんは大真面目な顔で、「俺が考古学だと言えばそれは考古学だ」と訳の分からない言い(ぶん)を述べた。