「ストイックな世界に身を置きたくて山伏になり、一人孤独に修業に励んでいたが……」
「どうしたんですか? 淋しくなって山を下りたとか?」
「淋しい? そんな言葉は俺の辞書には無い」

アホか、とまた言われてしまった。

「単に、溢れる俺の知性がそれだけでは許さないと言ったんだ」

そう言うと彼は、「よく聞け」と言って、己の生い立ちを親切丁寧に語って聞かせてくれた。

「嘘っ! 山伏なのに外国育ち! で、ハーバード大学を飛び級で卒業! で、貴方って二十六歳なんですか?」

どれも私を驚かすには十分な内容だったが、一番驚いたのは彼の年齢だった。そんなに若いとは思わなかった。

しかし、彼は華麗なる我が身の生い立ちに驚いたと思ったようだ。フフフンと鼻を高くする。

「大学には本来教授として迎えられたが、断った」

心霊考古学者としての仕事が忙しいからだと言う。が、何となくそれが自慢に聞こえるのは、私が(ひね)くれているからだろうか?

「しかし、無下(むげ)に断るには惜しい条件だった」

彼は守銭奴だ。提示された教授料が破格だったらしい。

「だから学長に、アドバイザーとして助教授というポジションならいいと言ったら、一も二もなくOKした」

やはり自慢話だ。

「ところで、俺はお前にまだ仕事の話をしていなかったな」

確かに。助手になれとは言われたが、具体的に何をするのか言われていなかったような……。

「何をすればいいんですか?」