本来ならば命を奪った自分を恨んで(しか)りなのに……と感慨(かんがい)にむせんでいると、「あいつも気の毒になぁ」と天地さんがしみじみと言う。

「それ、どういう意味ですか?」
「理由までは言わなかったが、使命を全うするまで成仏できないんだと。だから、絶対に祓わないでくれって頼まれた」
「出会った頃にそんなことを言っていたような……」
「で、俺もお前に死なれたら困る。だから、御大同様にあいつは祓わないことにした。その代わり、しっかり見張っていろと言っておいたがな」
「御大は無事に成仏されました」
「知ってる。逝く前に、生まれ変わるからしっかり店を守ってくれと頼まれた」

ほくほく顔なのは相当な見返りが期待できるからだろう。

「天地さんって……対価が無いと動かないタイプなんですね」

この間からのやり取りから、天地蒼穹という男は、自己中心的でナルシストな守銭奴で、いい人の仮面を被った人タラシだと分析した。

「当たり前だろう。俺は忙しいんだ。慈善事業でこんなことをしている暇はない」

フンと断言する彼を見て思い出す。

「そう言えばそれ、コスプレじゃなかったんですね。本物の僧侶とは驚きました」

なのに世のため人のためじゃなくてお金で動くって……詐欺師のようだ。

「ああ。二十二歳の時に訳あって仏門の世界に入った」

訳? 何だろう……と思ったが、彼はその理由には触れなかった。