「ありがとうございます」

ペットボトルの水をゴクゴクと一気に半分ぐらい飲み干し、ようやく一息吐く。
天地さんはそんな私の前で腕を組み、仁王立ちしていた。

「生き返りました」
「当然だ。あのままあいつらの中にいたら、お前は心臓麻痺で死んでいた」
「それ、どういう意味ですか? 私、心臓は至って丈夫ですけど」

霊たちと付き合えるのだ、そういうことだろう。

「胸を押さえていただろう? 脂汗が出ていた。それに呼吸が止まりそうになっていた。お前の心臓が幾ら丈夫でもあれだけの悪霊に取り囲まれたらひとたまりもない」
「私、悪霊に取り囲まれていたんですか?」

驚き訊ねると、天地さんは、そうだ、と頷いた。

「分かっていると思うが、お前を助けるたびに貸しがどんどん増えていく。借金を返すまで死ぬなよ」

まるでヤミ金の取り立て屋のようだが、悪人面で『命に替えても払え』と言わないところは良心的だ。

「ところで、天地さんってヒーロー体質なんですか?」
「意味が分からない」
「私がピンチになると何故か助けに来てくれますよね? 有料だけど」
「ああ、それはお前に憑いている霊が毎度知らせに来るからだ」

そう言えば、と思い出す。

「前回は肥沼の御大だったけど、今回は……シオ?」
「そう。あいつ、ブルブル震えながらそれでも必死に訴えていたぞ、『ミライが死んじゃう』ってな」
「シオ……」