「何よ出たって、幽霊じゃないんだから。貴女、本当に失礼ね」

それは夏休みもあと二日で終わりという日だった。

「ストーカーみたいに出没率が高いので――つるんでいません」

あれ以来、彼からは何の音沙汰も無い。逆に気味悪く思っていたところだ。

「あら、ストーカーと言うなら貴女の方じゃない? 私たちの行く先々にいるのは貴女の方よ」

いやいや、お嬢様方がコンビニとかディスカウントストアーの駐輪場にいることの方が不自然でしょう。

と、思いつつ、私はここで十五時から売り出される入浴剤を買わなくてはいけないので、彼女たちに構っている暇はなかった。

「あら、そう、じゃあ、急いでいるので、これでごきげんよう」

自転車に鍵を掛けると猛ダッシュで売り場に向かった。

――良かった、付いてこなかったみたい。

ホッと安堵の息を吐き、売り場にスタンバる。

お目当ての入浴剤は祖母が長年愛用していたメーカーの物だ。だが、そのメーカーが不景気の煽りを受け倒産してしまった。今回を逃すと一生手に入らない、と祖母が力説していた。

『ラベンダーの香りよ! それをあるだけ買ってきてね』

祖母に頼まれたら嫌とは言えない。そう思いつつ、辺りを見回す。

「でも……どうして入浴剤ごときにこんなに人が集まっているんだろう?」

私同様、スタンバっている人が大勢いた。