『肥沼葬儀店の一生ちゃん、来春結婚ですって』

祖母からその話を聞いたのは、その日の夜だった。そして、その翌日の逢魔(おうま)が時と呼ばれる夕方、御大がお礼を言いに来た。

〈良きご縁を頂き、ありがとうございました。これで肥沼葬儀店は安泰です〉

だが、今回私は何もしていない。そう言うと御大はゆっくり(かぶり)を振った。

〈いいえ、貴女の存在が私に幸運をもたらせたのです。感謝しております。これで私は生まれ変わることができます〉

「もしかしたら……曾孫(ひまご)って御大の生まれ変わり?」

肯定も否定もせず、御大は微笑んだ。

〈貴女と彼を引き合わせることが私の――〉

呟きのような声だったが、御大はそこまで言って、消えた。

「ちょっちょっと、何よ途中までって、最後まで言ってよ。気持ち悪いじゃない」

周りを見回すが、もう御大の気配はなかった。

「何なの? 彼って……あの山伏のこと?」

山伏は天地蒼穹(あまちそうきゅう)というらしい。スマートフォンのデーターから知った。

〝そうきゅう〟とは随分と僧侶らしい名前だと思ってネットで意味を調べたら、〝青空〟とか〝大空〟と書いてあり、苗字共々実に雄大だと思った――が、本人に言ったらつけ上がりそうなので、思ったこと自体を無しにした。


 *


「貴女、最近、山伏とつるんでるの?」
「出た!」

金之井嬢と二人の従者だ。