「金が無いなら助手になれ。それが身のためだ。お前、まだ死にたくないだろう?」
「私なんかを助手にしても、それこそ何の得にもなりませんよ。霊を視ることができる人なんてごまんといるでしょう?」

そう言いながら、そんなにいるだろうか、と自分で自分にツッコム。

「視える奴は確かにいる。だが、お前のように霊を納得させてあちらの世界に送れるのは滅多にいない」

山伏の鋭い眼がジッと私の瞳を覗き込む。
よく見ると彼の瞳は少し碧味(あおみ)かかった黒だった。

――あれっ? いつかどこかで見たような……そう思った途端、頭中の奥底でカチッと何かが繋がったような音がした。だが、それが何かは分からなかった。

ただ、澄んだその瞳に見つめ返され、妙にドキドキした。それが物凄く恥ずかしかった。それを気付かれたくなくて咄嗟(とっさ)に質問する。

「――めっ滅多にって、いたんですか?」
「ああ? ああ、過去に……いた」
「でも、貴方も霊を祓えるじゃないですか。それとどう違うんですか?」
「全然違う。俺の場合、祓うとなると問答無用だ」
「あっ、そう言えばシオがそんなことを言ってた」

シオと浅井青年のやり取りを思い出す。

「シオって、あの白い犬っころか?」
「知ってるんですか?」

当然、というように山伏はフンと鼻を鳴らす。