「それはどこからの情報ですか?」
「肥沼の御大からだ」

おのれ御大め、個人情報をペラペラと、何をしてくれるんだ!

「あの霊だけは俺の特別だからな、祓わないでおいてやっている」

「特別?」と首を傾げる。

「ああ、肥沼葬儀店と俺とは持ちつ持たれつの関係にある。かなり稼がせてもらっている。生憎、現社長は魑魅魍魎(ちみもうりょう)を毛嫌いする人で、俺のことを信じてくれないがな。その代わり、霊となった御大が生前と変わりなく俺に力を貸してくれている。だから俺もあの店を影ながら守ってやっているんだ」

裏事情を聞き、思わず、へーっ、と頷いてしまった。

「お前の危機を知らせに来たのは御大だ。ちょうど近くにいた俺をな」

あの時、突然消えたのはそのためだったのか……。

「御大、ありがとう」

〈どういたしまして〉と聞こえたが、気配はすぐに消えた。

「俺の力が強いから、長時間は側にいられないんだ」
「なるほど! だからあの三人も貴方に会うとすぐに退散するんですね?」
「まぁな」

山伏は楊枝(ようじ)を手に取ると唐揚げを頬張り始めた。

「お前、なかなかセンスがいいな。夏はガツンとくるスパーシーな味に限る!」

嫌がらせの意味で激辛風味を買ってきたのに――彼のお好みだったとは……。
目尻を下げて「旨い」を連呼する彼に、少しだけ殺意を抱く。

「で、どうする? 金を払うか助手になるか? 俺はどっちでもいい」