聞いたことのある威圧感溢れるバリトーンの声が聞こえた――デジャブ?
「また山伏の登場?」
金之井嬢の声に三井さんと住友さんがハッとする。だから、幻覚でも幻聴でもないと悟った私は「助けて」と叫び山伏の背に逃げ込んだ。
「やっぱりまた会えたな」
肩越しに振り向いた山伏がニヤリと笑う。
「ほらほら、お前ら、さっさと帰りな!」
ドスの利いた声が三人を追い払う。金之井嬢は悔しそうに舌打ちをすると踵を返し、その場を後にした。その背を三井さんと住友さんが追う。
「――ありがとうございました」
丁寧に頭を下げ、アイスのためにさっさと帰ろうと思ったが……やはり彼も、そうは問屋が卸さなかった。
「どういたしまして、と言いたいところだが、助けたのは二回目だ」
「はぁ。毎度ありがとうございます」
先程より深めのお辞儀をする。
「俺は自らが助けた場合のみサービス、と割り切っている。が、『助けて』と乞われた場合は仕事だと思うことにしている」
顔を上げると山伏が、掌を上にして私の目の前に差し出していた。
「もしかしたら金銭の要求でしょうか?」
「今回はまけてやる。アイスクリームを寄越せ」
そう言えば、と袋の中を見る。水滴をびっしょり付けたカップのアイス。中身は見なくても分かる。このまま持って帰っても、より悲惨な状態になるだけだろう。ならば――と、三つとも山伏に献上する。
「また山伏の登場?」
金之井嬢の声に三井さんと住友さんがハッとする。だから、幻覚でも幻聴でもないと悟った私は「助けて」と叫び山伏の背に逃げ込んだ。
「やっぱりまた会えたな」
肩越しに振り向いた山伏がニヤリと笑う。
「ほらほら、お前ら、さっさと帰りな!」
ドスの利いた声が三人を追い払う。金之井嬢は悔しそうに舌打ちをすると踵を返し、その場を後にした。その背を三井さんと住友さんが追う。
「――ありがとうございました」
丁寧に頭を下げ、アイスのためにさっさと帰ろうと思ったが……やはり彼も、そうは問屋が卸さなかった。
「どういたしまして、と言いたいところだが、助けたのは二回目だ」
「はぁ。毎度ありがとうございます」
先程より深めのお辞儀をする。
「俺は自らが助けた場合のみサービス、と割り切っている。が、『助けて』と乞われた場合は仕事だと思うことにしている」
顔を上げると山伏が、掌を上にして私の目の前に差し出していた。
「もしかしたら金銭の要求でしょうか?」
「今回はまけてやる。アイスクリームを寄越せ」
そう言えば、と袋の中を見る。水滴をびっしょり付けたカップのアイス。中身は見なくても分かる。このまま持って帰っても、より悲惨な状態になるだけだろう。ならば――と、三つとも山伏に献上する。