「別に――何となく貴女が目障りなだけよ」

しかし、金之井嬢の返事は何とも気の抜けるものだった。思わず「なんだ、それ?」と言ってしまったほどだ。

「そんな理由でカツアゲもどきなことをしたり、絡んできたりしているの? 意味が分からない」

ピラピラと手を振り、「だったら、これ以上は用がないってことよね」と言って立ち去ろうとしたのだが、そうは問屋が卸さなかった。

「待ちなさいよ! 逃げる気?」
「逃げるんじゃなくて、家に帰るの。さようなら」

これ以上は付き合いきれないと歩き出したが、先回りした三井さんと住友さんが私の前で両腕を広げて通せんぼをする。

〈本当に厄介な女子ですな〉

やれやれ、と首を振ると御大はフッと姿を消した。

霊とは自己中心的で我が儘だと分かっているが、乙女のピンチを目前に消えるとは……あの御大らしくもないと不可解に思う。

「誰が勝手に帰っていいと言った?」

ああ、面倒くさいと思いながら、「私よ」と自分を指差す。

「祖母が葱を心待ちにしているし、アイスクリームが……うわっ、溶けかけてる」

汗を掻いたようにグッショリ濡れているパッケージを目にして叫んだ。

「なら、私たちが食べてあげる」
「嫌よ、祖父たちと食べるんだから」

三井さんと住友さんに袋を取り上げられそうになり、エコバッグを胸元に抱える。

「お前たち、また悪さをしているのか?」