「あーら、ごきげんよう」

祖母が買い忘れた葱と夜食のおやつに三人で食べようと買ったアイスクリーム、それを持ってスーパーを出たところで、聞き覚えのある声が聞こえた。

振り向かなくても分かる。金之井嬢だ。

〈これはこれは、また厄介なモノに付き纏われておりますなぁ〉

シオ同様、貴方にも言われたくない、と思いながら肥沼の御大にチラリと目をやる。

(しわ)だらけの顔だが相変わらず勇猛(ゆうもう)面構(つらがま)えだ。
しかし、生前の印象は愛想のいい優しそうな雰囲気の気がいい社長だった。こんな風に憑き纏わられなかったら、御大が油断ならない狸親父だと知らなかっただろう。

「貴女、あんな胡散臭(うさんくさ)い山伏もどきとお友達だったのね? どうりで、鼻を突く嫌な匂いが貴女から漂ってくると思ったわ」

そんな御大から視線を逸らしてゆっくり振り向くと、案の定、三井さんと住友さんも一緒だった。

「野生の匂いっていうのかしら?」
「言えてる」

野生の匂いと言われてシオを思うが、それをシオに言ったら、《ボクは臭くない》と怒っただろう。

〈分かっておるでしょうが、このような輩は好みではありません。孫の嫁はもっと楚々(そそ)とした(しと)やかな女子(おなご)をお願いしますよ〉

歳が違いすぎる、と御大の要求に応じなかった私を、彼はひとまず諦めてくれたが、《なら、代わりの嫁を見つけておくれ》と代替案を出されてしまった。