「水谷さん、ありがとう。本当は私があの子に直接伝えられたら、と思うけど、私には霊感なんか少しもないから、今度、長政が枕元に立ったら伝えて下さい。貴方の母親になれて良かったと、叶うなら来世でも私の子供として生まれてきて欲しいと。お願いします」

私はゆっくり(かぶり)を振った。

「私が夢で伝えなくても、もう彼にその思いは伝わっていると思います」

〈ああ、伝わった。ミライ、ありがとう。写真はもう処分しなくていいよ。俺、本当は写真のことより、母ちゃんのその言葉を聞きたかったのかも……スーッと心が透明になっていくようだ。俺、()くね、バーイ〉

心残りを解消した霊は(いさぎよ)い。

〈――逝っちゃったね〉

シオが名残惜しそうに写真を見つめる。その写真の顔がフワリと微笑んだように見えたのは、目の錯覚ではなかったと思う。


 *


浅井青年を殺害した犯人が逮捕されたと知ったのは、それから三日後のことだ。

「捕まったんですか? 良かったですねぇ。あら、ミライちゃん、おはよう」
「爺様、婆様、おはよう。で、何が良かったの?」

新聞を手にする祖父に訊ねると、祖母がお味噌汁を卵焼きの横に置きながら、「ほら、ちょっと前に起きた隣町の殺人事件よ」と言った。すぐにそれが浅井青年の話だとピンときた。

「その犯人が捕まったんだよ」