「私ら長政のことを誤解してたから、あの子を女の子と誤解したまま付き合った男が、男と知って逆上して殺したんだと思ったんだよ。あんな脅迫のメモもあったし」

なるほど、有り得る話だ。

〈俺、美形な男ならイケると思うけど、基本女の子の方が好きだから。軽々しく男となんか付き合わないぞ!〉

だが、それはたちまち本人から否定される。

「メモ用紙には、具体的に何て書かれていたのですか?」

「確か……『悩ませるお前が悪い、ゲス』『神への冒涜(ぼうとく)だ!』『ビーナスより美しいお前は死ね!』他にもいっぱいありましたが、どのメモ用紙にも酷い言葉ばかり書かれていました」

――何故だかそのメモ用紙の内容が、浅井青年を上げて下げているように思えた。誰かと比べているのだろうか?

「あのぉ……処分して欲しいと言われていた写真、私にも見せてもらえませんか?」

現時点で私は生前の浅井青年の顔を知らない。

コクンと以知子さんは頷き隣の部屋に消えると、アルバムを一冊持って戻ってきた。その最後のページを(めく)り、そこに挟んであった写真を手渡してくれた。

手に取りそこに目を落とした途端、「綺麗……」と思わず言葉が零れた。
浅井青年の言葉は自画自賛でも誇張(こちょう)でもなかった。

「ビーナスより美しいって……比喩(ひゆ)でもなんでもないのかも」
「そうだね。女神様よりも美しい子だよ。それが罪だったのかね?」