「――で、その犯人って?」

話題を変えようと、気になったワードに探りを入れる。

「あの子、ストーカー被害に遭っていたみたいなんです」

答えたのは松さんではなく以知子さんだった。

「亡くなった後、鞄やゴミ箱からクシャクシャに丸められたり、破かれてバラバラなメモ用紙が見つかったんです。そこに酷いことが書かれてて……」

それは既に警察が回収済みだそうだ。

「ストーカーが……ここに浅井君を寝かせられないほど酷いことをしたということですか?」

その被害者である彼は今目の前にいる。だが、どういう訳か彼は話に参加してこない。

「検視解剖で、殴る蹴るに加え……硫酸をかけられたと……それも全身に……」

あぁぁぁ、だからあんなに酷い有様だったのか。

身体が震える。この感情が何からきているものか分からないが、私は自分の身体を自分の両腕で抱き締めた。

以知子さんを見ると、零れ落ちる涙を拭いもせず、グッと歯を食いしばっていた。

「犯人は――捕まっていないということですね?」

先程の松さんの反応を見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ。

「ああ。でも、目星は付いているそうだよ」

安乃さんが以知子さんの代わりに答える。しかし、それが誰か、ということまでは知らされていないようだ。