二人の食事シーンを想像するが、顔が分からないのでシルエットしか浮かばない。それが妙に哀愁を誘う。

〈もう一回母ちゃんのカレー、食べたかったなぁ〉

ここで母親と二人、肩を寄せ合い仲良く暮らしていたのだろう――なのに彼のこの有様は……本当に何があったのだろう?

〈その(ふすま)の奥が母ちゃんの部屋で、もう一つの襖の方が俺の部屋。さっきも言ったように、手帳は俺の部屋の、机の二段目の引き出しの中。その天井に張り付けてある〉

私の思いとは裏腹に、相変わらず浅井青年は写真にしか思いが無いようだ。

「何をボーッとしてるんだい!」

私に言われたのかと思ってハッとする。

「長政の同級生が来てくれたんだよ、お茶と夜食の用意をしておくれ」

だが、違った。

いつの間にか安乃さんは、彼の部屋ではなく〝母ちゃんの部屋〟の襖を開けていた。

そこに布団が敷かれていて、その枕元に三人の老人が座っていた……が、どことなく違和感を覚えた。

「あんた、長政のギャルフレンドかい?」

三人の中で唯一の男性がこちらに視線を向け、唐突(とうとつ)に口を開いた。

いいえ、と首を振る横で、〈なんでやねん! (まつ)さん、それを言うならガールフレンドやろ〉と、浅井青年が関西弁で突っ込んでいる。

通夜の席、ということを忘れそうだ。

〈俺と松さん、こんな風によくノリツッコミの練習をしてたんだ〉

何を目指して、と思ったが取り()えずスルーすることにした。