「しつこい! 付き纏わないで、って言っているでしょう」

今日も今日とて昼間だというのに……私の隣と足元には霊がいる。

〈そんなこと言わずに助けてくれよ。母ちゃんがアレを見たら絶対にショックを受ける。卒倒する。死んじゃうかも……。そんなことになったら……俺……俺……〉

泣きそうになりながらも必死に訴えてくる青年は、全身が血に汚れ、見るも無惨な姿だった。

――全く、勘弁してよ。

どうしてこんなもの(=霊)が視えるようになったのか? 原因は分かっている。しかし、理由が分からない。深く息を吐き、きっかけとなった事故を回顧する。



【SCENE1】



それが起こったのは六年前。私の十一歳の誕生日だった。原因はガス爆発。
当時の新聞によると、六階建てのマンション全(二十四)戸と、近隣の住宅二十三軒が全焼・全壊、または、半焼・半壊の被害に()ったとあった。

爆発元はマンション一階住人宅。家主がガス自殺を図った際、何らかの火気が引火したことにより爆発したとなっていた。

掲載されていた近隣住人談には、『爆弾が落とされたのかと思った』とあり、証言どおり被害は多大で、死者三十一名、重軽傷者九十七名を出す悲惨な事故となった。

不幸にも、我が外場(そとば)家はそのマンションの六階にあった。巻き添えを食らい両親は死亡。私は視力と事故当日前後の記憶を失った。

が、命は助かった。爆風で数十メートル先まで吹き飛ばされたにも拘わらず……。