「あら、外場さんじゃない」

霊との空間に身を置いていると、自分が今どこにいるか忘れるときがある。ハッと意識を戻すと、ホームで電車を待っている自分を思い出す。

声は背中の方から聞こえた。明らかに生者の声だった。振り向くと、クラスは違うが見覚えのある同級生が三人、二メートルほど離れたところにいた。

「全身黒……お盆だから?」
「ウケるぅ!」

かく言う三人は――赤青黄色。蛍光色の信号機といったところだろうか? おまけに、世間にスタイルの良さを見せ付けるかのような露出度満点のデザイン。

祖父が見たら眉間の縦皺(たてじわ)が数本増えそうだ。
いくら伝統のある格式高い私立高校だとしても、祖母のような大和撫子ばかりではないということだろう。

それでも彼女たちが下品に見えないのは――言葉は悪いが〝腐っても鯛〟という諺どおり、良家のご令嬢たちだからだ。

「私たちこれから遊びに行くんだけど、資金が少し足りないと思っていたの、カンパして下さる」

でも、そんな環境に反発するかのようにワルぶる子もいる。

〈彼女ってリョウ?〉

そうだよ、と目で答える。

三人の中でもダントツにスタイルの良い彼女は、CMでもお馴染みの高校生モデル、リョウこと金之井涼子(かねのいりょうこ)。金之井物産というこれまたダントツに大きな会社の社長令嬢でもある。

〈後の二人は知らない……誰?〉

二人は金之井嬢の取り巻きで、三井さんと住友さんだが、今ここでそれを説明するのはちょっと無理だった。

「貴女、どこ見ているの?」

何故なら、無視されたと思ったのか、語気を強めた金之井嬢が、威圧感たっぷりに私の目前に立っているからだ。