やってしまった。絶対に変な子だと思われた。これだから霊に関わりたくないのだ。

〈どうしたの? 何怒ってるの?〉

突然前置きもなく、無視するように歩き出した私にシオが訊ねる。
ふん、答えてなんかやるものか。無言を通して私は駅に向かって歩みを進める。

浅井青年の自宅はここから電車で一駅のところだそうだ。

浅井長政(あざいながまさ)、二十一歳。大学生……」

事前に聞いておいた彼の情報を口の中で呟く。

だから喪服姿なのだ。『高校生なら制服で十分では?』と祖母は言ったが、設定を同級生にした手前、こうなった。

しかし、祖母の追究がなくて良かった。『そうね、淑女たる者、正装で行かなくちゃね』と、釈明の言葉も聞かず勝手な解釈で自己完結してくれたのだ。

「それにしても、これ本名? 戦国時代の武将の名前だよね?」

シオに訊ねたつもりだが、〈正解!〉と返事をしたのはその名の主だった。

〈俺が生まれたときに、母ちゃんが()まってた戦国武将ゲームの()しキャラ〉
「お母さんの理想の男性って、武将? 渋いわね。貴方にも男らしくって言ってたし」
〈そう。でも、ゴツゴツしたのはブー、NGなんだって〉

戦国武将のゲームといっても、登場するのは美麗なイケメンばかりらしい。