〈だから葬儀屋も、手を替え品を替えニーズに合わせた商品を開発して、お客さんの獲得にしのぎを削っているんだって〉

「それ、肥沼(ひぬま)御大(おんたい)に聞いたの?」

肥沼の御大とは、この辺で一番大きな葬儀屋、肥沼葬儀店前社長のことだ。
(よわい)百八まで現役で働き、昼食で腹を満たし、風呂で身を清め、その後ポックリ亡くなった、大往生(だいおうじょう)を絵に描いたような人だ。

そんな肥沼の御大も私を頼ってきた一人だった。
他の霊よりは幾分見栄えは良いが、なにぶんにもお歳がお歳なだけに、妙に迫力があって怖い。

彼の心残りは《曾孫(ひまご)の顔を見たい》だった。

だが、御大の孫はまだ独身。だから、『お嫁さんもまだなのに無理な相談です』と断ったら、《なら、あんたが嫁になればいい》と無茶なことを言い出し――今に至る、という厄介な霊だった。

「まぁ、それは横に置くとして――お家でお通夜……お寺で葬儀……行くならどっち?」

呟くように言って、うーんと腕を組み考える。

〈ボクはお寺で葬儀に一票。留守の間に忍び込めばいいと思う〉

シオはあくまでも私に泥棒をさせたいようだ。

〈女怪盗ルンルンみたいに華麗に奪っちゃおう!〉

それは、下半期から始まった新作ドラマだった。霊にもかかわらず、シオはこのドラマの女主人公に熱をあげていた。どうやらさっきからの発言は、全てテレビの影響みたいだ。