「それで、アレって何? ショックを受けるってどういうこと?」
〈えっ! 助けてくれるの。うわぁ、サンキュー〉

大喜びの青年の周りを〈よかったね、よかったね〉と言ってシオが跳ね回る。
結局、どう(あらが)おうがこうなってしまう。頼られたら断れない自分の性格が恨めしい。

〈実は……〉

さっそく青年の告白が始まった。耳をそばだて彼の話をジッと聞く。だが、だんだん頭が垂れていく。そして、聞き終わったと同時に盛大な溜息が出た。

「それで、貴方は私に何をして欲しいの?」
〈だから、写真を捨てて欲しいんだ……〉

青年はトランスジェンダーだった。

〈俺、別に身体まで女になろうと思ってたわけじゃないんだ。ただ、男の娘の姿が好きだったんだ。だって、自分で言うのもなんだけど、そこら辺の女の子より可愛かったんだよ〉

半分溶けて崩れかけている彼の口元がニッと上がる。
ダメだ、直視できない!

〈あっ、俺ほどじゃないけど君も綺麗だと思うよ。特にその漆黒の長い髪が〉

褒められたようだが褒められた気がしない。全然嬉しくない。

――でも、彼に何があったのだろう?

青年の言葉どおりなら、原形を留めていない顔や身体をこんなに崩壊するまで誰かが何かしたということだ。